第738話

「ようこそおいでくださいました。大魔法使いの朝倉・クラヴェル・クローデット先生ですよね。お噂はかねがねお聞きしております」


「あぁはい、どうも。それはありがたいことで」


「なんでも宮廷魔術師を辞められたとか。どういう事情か分かりませんが、心中お察しいたします」


「いえいえそんなとんでもない。まぁ、立場は責任を伴うものですからな」


 リハビリセンターに入るやいなやである。

 パラケルススとそう年齢の変わらない、壮年の男が駆け寄って来た。


 自分の挨拶もそこそこに、朝倉に挨拶をするその壮年の男。

 どうも朝倉はもやもやとした感情を抱いたのだった。


 いや、別に、嫌という訳でもない。

 かといって、好きという訳でもない。


 どう表現していいか、分からないが、なんというか、間が抜けているというか。


「すみません、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」


「あぁ、すみませんねぇ。私としたことがついうっかりと。悪い癖ですな、はは」


 どこか抜けている感じのその男は、朝倉へと握手を求める。

 朝倉がそれに応じると、嬉しそうに笑って手を上下に振った。


「浦部・チュルパン・民雄と申します。リハビリセンターの所長を務めておりますれば、先生の身体強化の魔法のお力を、是非お借りしたいと思っておりました」

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