第737話

 パラケルススに導かれるまま、朝倉が連れてこられたのは――なんのことはない、王都にある国立中央病院であった。


 ここには、医療魔術と称して、外科・内科を問わず、麻酔の代わりに幻覚魔法を使ったり、投影魔法を使い体の内部の把握をしたりと、そういうことが行われている。


 まさかその医療魔術グループが、自分に出資してくれるというのだろうか。

 いや、それはないなと、朝倉はシビアにその浮かんだ考えを否定した。


 理由は単純である。

 医療魔術師たちは非常に強固な共同体コミューンを形成しており、身内どうしてなにごとも解決しようとするきらいがあるからだ。

 補助金を出すにしても、自分のような人間にはまずよこさないだろう。

 という考えだ。


 となると、まったく魔術と関係ない団体か。


「ほれ、ぼさっとしておるな。はよついて来んか」


「分かりましたよ師匠。っていうか、人を子供みたいに扱わないでくださいよ」


「弟子なんて、何年経っても子供みたいなもんじゃて――おぉ、ここじゃここじゃ」


 そう言って、パラケルススが立ち止まったその場所。

 そこには、大きな看板で、中央病院リハビリセンターと書かれていた。

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