第736話
それは願ってもみない申し出だった。
いや、というか、そもそも魔法協会から、普通に助成金を貰えばいいのだが。
どうして回りくどいことをするのだろうかと、朝倉は少し考えた。
「どうせお主のことじゃ、ワシに嫌味を言われたくないんじゃろ?」
「すべてお見通しってか」
「分からいでか。で、魔法協会には助成金の申請を出さんつもりじゃろう?」
「そこまで分かっているなら、もっと色々と手配してくださいよ、師匠」
「ワシ、弟子は谷底に突き落として育てる派じゃから」
「ハッハッハ!! 俺は這い上がって、師匠を谷底に引きずり込む系の弟子でしたわ、今更思い出しましたよ!!」
朝倉の眉間に皺が寄った。
老人の要らぬ気づかいが正直に言って勘の虫に障ったのだ。
しかし、怒ってみたところで、それでどうなるものではない――。
「で、その師匠がお膳立てしてくれる、ありがたい団体は、いったいどういうところなんです?」
しかし。
そこは一応、酸いも甘いも噛み分けてきた、朝倉魔術師である。
師パラケルススの言葉に、苛立ちつつも乗ることにしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます