第735話
「ふぉっふぉっふぉ、お悩みかな、朝倉氏よ」
「――なんだその芝居がかった台詞は」
もやりと青い光が工房に立ち込めた。
かと思うと、朝倉の前に老人が現れる。
それは、先ほど彼女が、固く力は借りるまいと心に誓った相手。
魔法協会の理事長を務めている男だ。
朝倉の魔法の師匠にして、稀代の大魔術師パラケルスス。
彼は好々爺の相好で落ちぶれた弟子に近づくと、厭味ったらしく微笑んだ。
「おうおう、小銭稼ぎに精が出るのう。涙ぐましいのう。宮廷魔術師ではなくなり、国庫から研究資金を引き出せなくなった人間は哀れじゃのう」
「師匠、暇ならボケ防止にクロスワードパズルでもやってたらどうですか?」
「弟子からかいの方がよっぽど老化防止に効果ありとみた」
こんのクソ爺と、朝倉が心の中で悪態を吐く。
そこまで含めて楽しんでいる感じだ。
パラケルススはまた、ふぉっふぉっふぉと、間延びした笑い声をあげたのだった。
「なんじゃなんじゃ、訪問し甲斐のない弟子じゃのう。せっかくワシが、お主に助成金を出してもよいという団体を紹介してやろうと来てやったのに」
「――なんだって?」
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