第734話

 ちなみに、魔法使いはそれぞれに研究分野を持っている。

 分かりやすいのが南条の疑似生命魔法などだ。


 その道の大魔法使いと呼ばれる者たち。

 彼らは、それぞれ、その分野においてトップを走る、一流の研究者でもある。

 そしてかくいう朝倉の研究対象は――。


「俺の人体強化魔法の研究は、なんだかんだでウケが悪いからな。そもそも、体を硬化させて、打撃力を増すなんて超攻撃的な研究、どこが支援するんだよって感じだ」


 とまぁ、とびぬけてニッチな分野の研究をしていた。


 それ故の宮廷魔術師というポスト。

 だからこそ、研究費として国庫から自由に金を引き出せる権限。


 ――だったのだが。


 はぁ、と、朝倉はため息を吐き出した。


「南条みたいに、もっと商売に展開しやすい、研究内容にしておくんだったぜ。今更ながらに、自分の進んできた道に後悔するよ」


 しかし、やりたかったのだから仕方がない。


 ちなみにそれとは別に、彼女はオールマイティに魔法がこなせる。

 なので、商売自体はできなくはない。


 できなくはないが。

 最先端の分野を研究するための資金と、日々を食つなぐだけの資金。

 そこにはどうしても大きな差がある――ということであった。


「どうしようかね、これ」

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