第729話

 カミュが目を覚ますと、部屋には肉の焼けるいい匂いが漂っていた。


「あら、もう起きましたの、カミュ」


「――師匠、このお肉の焼けるいい匂いは?」


「今日は栄養をつけるために、フィレ肉のステーキにしましたわよ」


「――夜もフルコース!!」


 まったくその通り。


 フランベにより燃え上がるフライパン。

 その上で、フィレ肉がじゅうじゅうと濃厚な音を立てて焼きあがっていく。


「今日は一日、カミュは頑張りましたからね」


「――頑張りました!!」


「そのご褒美ですわ。しっかり食べて、しっかり大きくなりなさい」


「しっかり、大きく」


「それも大事な修行の内でしてよ」


「――分かりました、師匠!! 師匠の期待に応えられるよう、頑張ります!!」


 うふふ、あはは、と、美しい師弟の声が、夜の王城に響き渡る。


 あぁ、美しきかな、師弟愛。

 これこそまさしく、師弟のあるべき姿ではないか。


 そう思いませんか、皆さん?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る