第725話

「カミュ。そろそろお昼にしましょうか」


「――手伝います!!」


 むふぅ、と、息巻いて南条と共にキッチンに向かうカミュ。


 朝が弱いため、朝食の準備は師匠に任せきりだ。

 だが、昼はカミュも料理を一緒に作ることにしていた。


 それは、将来的にカミュが独立した時のためである。


 とはいえ、南条たちに拾われるまでは、もともと山奥の小屋で独り暮らしをしていたカミュである。

 料理の腕前は教わるまでもなく、それなりにあった。


「――リンゴの調理、まかせてください!!」


「あらあら、張り切ってますわね。では、おねがいしましょうかしら」


「――任されました!!」


 するりするりと、ナイフを使って綺麗にリンゴの皮を剥いていくカミュ。

 その手際の良さに安心して、南条はメインのパスタ料理のソース造りに専念する。


「――可愛く、できました!!」


「あら本当」


 ぴょこり、ウサギのように耳を残して作ったリンゴ。

 八匹分のそれを眺めながら、師弟二人はほほえましく笑い合うのだった。

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