第723話

 さて、なんといっても南条も、体育会系魔法使いパラケルススの弟子である。


 朝倉同様。

 その弟子の修行スタイルもスパルタ方式――という訳でもない。


「カミュ、頑張りまして、あと王城を二周(400m)でしてよ!!」


「――もう、無理」


「まだ三周ですわ!! そのくらいで音を上げていてはいけませんわ!!」


 やっているのは基礎体力を養うトレーニングである。


 1kmのランニング。

 まぁ、それほど負荷の高いものではない。


 とはいえ、人間とは根本的に体の造りが違っているホムンクルスだ。

 その辺りの差異を考えて、南条は常にカミュの体の調子に目を光らせていた。


 ふらり。


 その脚がもつれて、カミュが前のめりに倒れそうになる。

 瞬間、弟子に激甘溺愛師匠は、転移魔法を発動させた。


 崩れ折ったその膝が地に着く前に、弟子の体をそっと前から支える南条。


「もうっ!! だらしないですわね!!」


「――すみません、師匠」


「仕方ありませんわ。人には人の限界というものがありますわ」


 今日はこのくらいにしておきましょうか。

 そう言うと、たわわに実った胸に弟子を押し付ける。


「よく頑張りましたわね。えらいえらい」


 南条はそう言って、カミュの頭を撫でるのであった。


 皆さんもされたくありませんか。


「――が、頑張った、私!!」

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