第721話

「――おはよーございます、師匠ぉ」


「おはようカミュ。朝ごはん、できてますわよ」


 テーブルの上に料理を並べ終えた矢先だ。

 ちょうどその料理の匂いに誘われるように、もっそりとベッドから這い出て来た者があった。


 水色のパジャマ姿。

 南条の愛弟子であるカミュだ。


 彼女は静かにテーブルの前へと移動すると、今朝の料理を眺める。


 口数の少ない彼女。

 しかしながら、その代わりとばかりに、その眼が雄弁にモノを語る。


 南条のこしらえた料理を眺めると、きらりと寝起きの彼女の目が光った。

 どうやらお眼鏡にかなったらしい。


「――朝からフルコースです」


「あらあら、お世辞を言っても何も出ませんわよ、カミュ」


「――お世辞ではありません、事実を述べたまでです。師匠、ぐっじょぶです」


 ぐっと、師匠に対して親指を突き出して見せるカミュ。

 その仕草にくすり、と、南条は口元を隠して笑った。


「もう、どこで覚えてきましたの、そんな言葉。さては、朝倉さんのところのノエルさんですわね」

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