第717話

 ギムレットはノエルが担いでいた薪束を彼女から受け取った。

 そしてその中から、何本か適当なものを選ぶと、一抱えにして彼女へと渡した。


 きょとんとそれを受け取るノエル。

 すぐに、ギムレットは斧一つ持って、彼女から数歩離れた場所へと移動する。


「よし、そこからお前、ワシに向かってその薪を投げつけろ」


「えっ!! いいんですか!?」


「渾身の力でいい。アレだ、朝倉が言ってた、限定解除ディスペル・ワンをしても構わない」


 きらり、と、ノエルの瞳が輝く。


 積年の恨み晴らさいでか。

 いきなり薪を振りかぶった彼女。


 ど正面、ドワーフの鼻頭めがけて、ノエルは薪を勢いよく投げつけた。


 限定解除ディスペルワンするまでもない。

 それは音速を越えたすさまじい速さの一撃だった。


 しかし。


 すっと添えられたギムレットの斧は、それを真芯――真っ二つに割る。

 薪は、彼の体をかすめることなく、左右に飛んで茂みに消えた。


「ほれ、もういっちょ。その抱えてるのが尽きるまでだ」


 と、ドワーフ男がにかりと笑って言った。

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