第716話

「よし。もういい。今日はここまでだ。無理しても仕方ない」


「で、でも。少し休めば、ノエル、もうちょっと、頑張れます」


「もうちょっと頑張るんじゃない。ノエル、それが間違いなんだ」


「はい?」


 言っている意味が分からない、と、ノエルが首を傾げる。


 彼女の頭の中は今、やらなければいけないこと――薪を運ばなくてはいけないという、そういう目的意識に完全に支配されていた。


 そして、それがつまるところ、問題なのであった。


「ノエル。ワシはお前を朝倉から、鍛えるように頼まれた」


「そうです!! けど、ノエル、全然弱っちくなんかありませんから!!」


「いや弱い」


「熊だって、これまでに何匹も倒してます!! それより強いモンスターも!!」


「しかし、お前には圧倒的にものがある。分かるか?」


 足りていない、と、ノエルが呟く。


 まったく心当たりがない、そんな感じで、彼女はキョトンとドワーフを見た。

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