第714話
「――まぁ、流石に冗談だよ」
「――冗談?」
「基礎練習は当面、さっきの二つだ。あとは薪持ってゆるゆると帰るぞ」
「ほ、本当ですか?」
「帰り道は普通に整備された道を使う。つっても、それなりに重量のあるものを背負って移動するんだ、体力配分には十分に気を付けるんだぞ」
「合点承知の助さん格さんやっちゃいますです!!」
妙な返事をして、ノエルは自分の胸を叩く。
先ほどの、デッド・オア・アライブ登山と比べればなんということはない。
ギムレットが提案した帰宅案は、実に緩いもののようにノエルには感じられた。
だが。
賢明な読者の諸君はご存知の通りだと思う。
山や階段、とかく、そういう高所の移動というのは、行きよりも、実は、帰りの方がエネルギーをよく使う。
自分の体重を支えなければいけないためだ。
そしてここに、ノエルのちょんぼにより、倍に膨れ上がった薪がある。
「へっへーん、それなら楽勝。ノエル、こういうのは得意ですよ」
「ははっ、言ってくれるじゃねえか」
「ふふん、見ててください。すぐに帰ってビューんですから」
もちろん、ギムレットは下りのキツさを承知でいっている。
しかし、彼はそんな思惑を微塵を感じさせず――まさしく腹黒タヌキという感じに――ノエルの肩を優しく叩いたのだった。
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