第712話

 ちょうどいい塩梅に、滝の下には立つのにおあつらえの石があった。


 ひんやりと冷たいそこに足の裏を預ける。

 そしてノエルはがたりがたりと、上から降って来る冷たい雪解け水に体を浸した。


「しゃ、しゃぶい、さぶ、さぶ、こ、コールド、イッツ、コールド」


「おーう、やっと入ったか。そしたら今から薪を流すぞ」


「薪!? 流す!?」


「それをお前は下で全部受け止めろ」


「はいぃっ!?」


「一本落とすごとに、帰りに積んでいく薪が十本増えるからな!!」


「無理ですそんなの!! 手が、かじかみかみかみでなんですよ!!」


「無理でもやるのが修行ってもんだ」


「とてもじゃないけど動かな!!」


「ほーれ一本目!!」


 容赦なく、ぽいとギムレットが滝の中に薪を放り込んだ。

 それはゆるりゆるりと水の流れに乗って、ほどなく、ノエルの頭上に落下した。


 正中線、ど真ん中に落ちて来たそれ。

 だが――寒さに気を乱されたノエルには、とても捉えることはできない。


「うにゃぁっ!!」


「はーい、まずは十本追加だなぁ。次だ!!」

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