第711話

 いつも着ている魔導服から、着慣れない襦袢に着替えたノエル。

 

どばどばと流れ落ちてくる滝を前に、ぶるりぶるりと彼女は肩を震わせた。


「――ほ、本当に、これに入るんですかぁ!?」


「入る。というか、入れ」


「無理ですよ!! ここ、結構寒いじゃないですか!!」


「そうだなぁ」


「そうだなって!! こんな滝の中に入ったら、心臓発作で死んじゃいますよ!!」


「大丈夫だ、ワシも朝倉もやった修行だ。どっちもピンピンしてるだろう!?」


「二人が異常なだけですよぉ!!」


 どすり、と、ノエルの足元に手斧が落ちる。


 つべこべ言っているんじゃない。

 と、滝の上の師匠の師匠が、眉間に皺を寄せて彼女を睨み付けていた。


 これは駄目だ。どうやってもやるしかない。


 南無三。

 ノエルは滝の中へと飛び込んだ。

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