第675話

 しかし。


「甘い!! お忘れか!! 私には転生の秘術があることを!!」


 朝倉の背面から声がする。

 それは、壁に埋め込まれている、魔法使いの一人であった。


 声色こそ違えど、その口ぶりはまさしく――。


「ジャン・バルジャン!?」


「体を失ったとて、それがどうというもの!! 替えは幾らでもある!!」


「くそっ、そいつを忘れていた――」


「そして朝倉氏、感謝しなさい。その対象に、貴方もまた入っているということを。女ながらに、そして、魔術師ながらに鍛え上げられたその肉体は、まさに芸術と言って差し支えない――私の転生先としてはうってつけ!!」


「やはり、生きたまま拘束しないとダメか。しかし、今、師匠には頼れない――」


 手詰まりか、と、いよいよ朝倉に焦りが見えた時。


「トァーッ!! 師匠の仇ーッ!!」


「ノエル!?」


 ぷちり、と、転生したばかりのジャン・バルジャンに向かって、ノエルが物理魔法で攻撃を仕掛けた。

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