第672話

 五体満足。

 強制転生により、自由になる体を手に入れたジャン・バルジャン。


「くくくっ、言いましたね、朝倉・クラヴェル・クローデット!! 私の四肢をもいだのは事実だと!! 貴方は先ほど確かにそう言った!!」


「あぁ、そうだぜジャン・バルジャン!! もう一回、バッタかカエルみたいに、みじめな感じにしてやるぜ!! 監獄長には悪いがな!!」


「ふははっ!! やはりだ、やはり貴方は何もわかっちゃいない!! 不死の魔術の深淵とは、この程度のものではないのですよ!!」


 言うや、ジャン・バルジャン体から黒い影が伸びた。

 それは人間に本来存在しない


 さらにもう一本、もう二本と、その腕は増えていく。


「女史!! まずはそのはだはだ愚かな思い上がりを悔いるがいい!! この通り、不老の魔法の研究の末に、我が体――いや魂は、既に物質的な欠損なぞ慮外であるということを!!」


「――チッ、なめくじかよお前は!!」


「もがせてあげたという表現!! 分かっていただけたか!! さぁ、では、参ろうか!! 不死・不老の妙技妙術、とくと味わうが好い!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る