第668話
死後、日にちがたち、腐乱したからではない。
どうやらこれは――。
「そうです。体内魔法による、時限自死です」
「監獄長」
「彼はあらかじめ、自分が拘束された時のことを予見して、自身の体の中に時計仕掛けの爆弾を仕込んでおいたという訳ですよ」
朝倉の背後から、そっと監獄長が近づいてくる。
彼の表情は陰っていてよく見えなかった。
なるほど、それくらいのことは、しているのではないかと、考えるべきであった。
魔法が使えぬようにと、四肢をそぎ落とし、精神を混濁させるだけではまだ足りない。体内に時限式の魔法が仕込まれていないかくらい、思いつくはずだっただろう。
だが、どうして、それにしたって、収監してからこんなにも長い時間をかけて、それを設定しておいたのか。
「――そして朝倉女史。君は考えているだろう、どうして今更、こんな時間が経ってから、この男は自ら死ぬようにその身に魔法を仕込んでいたのかと」
「なに?」
監獄長の声色が変わる。
くく、と、ひそみ笑いが闇に響いたかと思うと、彼は唐突に顔を上げた。その顔には、黒曜石から削り出された面がつけられていた。
「答えは簡単だ、君がディァボリクァをこの場に連れてきてくれる!! それを我らは予見していたからだ!!」
「監獄長さん!?」
「そう、ここ数十年に渡って、私があつらえた、傑作たちの集まるこの場にね!!」
「お前!!」
「大陸最強――弟子をとってその名も色あせたか? 強制輪廻は何も、胎児ばかりに生まれ変わるものではないのですよ!!」
【次週につづく】
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