第664話
第二層からは、趣が少しばかり変わってくる。
数名をまとめて収監していた牢屋は、一人一つの個室となっている。
さらに、鉄の扉によりプライベートが保護されるようになっていた。
さながらホテルという趣である。
これにはノエルも首を傾げた。
「ここ、本当に牢屋なんですか?」
「牢屋だよ」
「なんだか鼻歌とかが聞こえてきますけれど」
「犯罪者でもいろいろなタイプがいる。予期せず犯罪を起こしてしまったり、脱税したりとね。まぁ、第二層はそういう、比較的に穏健な魔法使い――やんごとない事情で収監された奴が入れられる層だ」
「へぇ」
有益な魔法の研究をしている人間の中には、ときどき、倫理観や社会通念について、希薄な者がいたりする。
朝倉もあまり人のことを言えたたちではないのだが――そういう、うっかりとした魔法使いが入れられるのが、ここ、第二層の監獄なのである。
「すると、ノエルも入れられるならこっちですかね」
「さぁ、そりゃどうかな」
「えぇ、こんなに優秀な魔法使い、そうそういないのに」
「なんにせよ、こんなところ、入らないのに越した方がいいにきまってらぁな」
その割には、どこかのどかで快適な監獄第二層の空気。
普通の工房よりこっちのほうが魔法の研究がはかどる。
とは、過去、脱税により収監されたことのある、錬金について研究している魔法使いの談であった。
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