第663話

 大監獄シャトー・ディフ。

 そこは露天掘りの硝石採掘場を再利用した、四層からなる地下監獄である。

 主に収監されているのは魔法犯罪者だ。


 第一層は単純に、魔法を悪用して殺人などの刑法を犯した者たち。

 目つきの悪いごろつきたちが、手首に魔法封じのリングをはめられて、通路を通る朝倉たちをじろじろと睨んでくる。


 平時であれば、その人睨みで、人を絶命させることのできる。

 あるいはその暴言ひとつで、人を殺めることのできる。

 そんな魔法使いたち。


 だが、魔法使いも、魔法を封じられてしまえばただの人だった。


「ほえぇ、なんだか目つきのわるい人たちがいっぱいいますね」


「そりゃそうだろ、ここは監獄なんだから」


「ノエルも悪いことしたら、ここに収監されることになるんですか」


「まぁ、そうなるだろうな」


 とはいったが、ノエルの魔力量は底が知れない。

 魔法封じのリングはあくまで、一定の魔力量しか抑え込むことができない。時々、うまく魔法を封じ込めることができなかった犯罪者が、暴動を起こしたりする。


 そうなると、もう、魔法を使う手段からして封じるしかなくないのだが――。


「おっ、あの人!! 手が鉤爪になってますよ!! 犯罪者でも厨二病はいるんですね!!」


「――あぁ、そうだな」


 案外、それはそれでこいつは別に気にしないかもしれないな。

 と、不謹慎にも思ってしまう朝倉であった。

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