第631話

 曰く。この裏通りは、雑然としているように見えて、所属する派閥のグループによって、客を取る場所が決まっているのだという。

 彼女はその中でも中流派のグループに属しており、顔と体はそこそこだが、比較的客の目に留まりやすいこの場所を得られているのだとか。


「けどね、この制度っていうのは、ここ数十年でできたものなのよ。それより前からここで夜鷹をやっている奴らからしたら関係ないわけ――卑怯よねエルフって、何十年、何百年経ったって、ふけやしないんだから」


「そのかわり病気には弱いさ」


「それでね、不動の七姫って呼ばれてる、古株ロートルがこの裏通りにはいるの。彼女たちは、場所のルールに従わず、いつも同じ通りで客を取るんだけれど――」


 その不動の七姫の一人、トチ婆が、最近引退したのだという。

 しかも、まったく一切、なんの痕跡も残さず。


「そしてその次の日に、そのトチ婆の路地裏に住み着いた奴がいてね。それがまた、やりにくい相手なのよ」


「やりにくいってのは?」


「やだ、同じ女にそういうこと、言わせないでよ」

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