第595話
「いやぁ、助かります。うちの孤児院でも、このウェハースのことは話題になっていたんですが、なにぶん毎日の食事で手いっぱいで」
「いやいや、困ったときはお互いさまですよ。子供たちが喜んでくれてなによりです」
ここは王都の真ん中にある孤児院。
王侯貴族がその運営に出資した、由緒正しく、それでいて、朝倉たち宮廷に仕えている者たちにもなじみの深いところである。
そんな孤児院の中庭で、集まった子供たちにウェハースを配るのは、何を隠そうその朝倉の不詳の弟子であった。
「おねーちゃん、これ、レアカードも入ってるの?」
「入ってますよ。ダブったのが何枚かありましたので」
「スゲェーッ!! いいのそんなのもらっちゃって!!」
「いいですよ。その代り、ちゃんとウェハースも残さず食べてくださいね」
「もちろんだよ」
「むしろそっちがメインだよな」
「おやつなんて、滅多に食べられないし」
ししし、と、すきっ歯を見せあって笑う子供たち。
男の子も女の子も、こぞってノエルの周りに集まるその光景は、なんだかほほえましいものがあった。また、ノエルにしても、どこか救われたような顔でその光景の中になじんでいた。
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