第592話

「ノエル。お前がどういう趣味を持とうが、俺はそれを尊重するし、その趣味のために一生懸命になることを否定はしない」


「さすが師匠、話が分かる。けど、それなら、なんでノエルはいま正座をさせられているのでしょうか」


「――しかしな、この手のコレクションものというのは、凝りだしたらキリがない。なまじ、ランダムなのが余計に性質が悪い」


「それは、まぁ。けど、そういうものなので、仕方がないのでは」


「そうだ仕方がない」


「でしょ」


 だから、と、ずいと朝倉は弟子の前に顔を突き出す。

 力強い師匠の眼力に思わずノエルが言葉を詰まらせる。


 十分にビビらせてのち、朝倉はノエルの肩をがっしりと両の手で掴んだ。


「こういうのは、ちゃんとした線引きをして楽しむべきだ。一週間に何個までとか、一カ月にいくつまでとか、そういうのをちゃんと決めてやらないと、泥沼になる」

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