第590話

【アイテム アメージングマン・ウェハース: 魔法テレビのヒーロー、アメージングマンの登場キャラクターのシールがついたウェハース。手工業が主流のこの世界では、シールとウェハースは別々に製造されており、契約を結んだ菓子店が、ウェハースにシールをつけて売っている】


 とまぁ、そんな感じの、どこかで聞いたことのあるシールである。


 ここ最近の熱心なまでの弟子の献身は、このシール欲しさ故のことであった。と、話のタネが分かってしまうと、途端に虚しさを朝倉は覚えた。


「話によると、全部で百種類くらいシールがあるんだって?」


「そうなんです。全部集めようと思うと、なかなかこれが難しくって」


「さらに隠しキャラクターや、色違い、ホログラム魔法加工された、レアシールもあるんだってな」


「師匠、お詳しいんですね!! いや、ノエル怒られるのかと心配して――」


 立ち上がろうとしたノエルの前に、だんと朝倉の右足が伸びる。

 踏みつけられはしなかったが、その膝先をかすめるくらいの場所を力強く踏みつけると、朝倉は冷たいを視線を弟子に向けた。


「こんなもんにうつつをぬかして。ノエル、ものには限度ってものがあるんだぞ」

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