第589話
翌日。
朝も早くから朝食を終えるや、ノエルは工房の床に正座をさせられていた。
目の前には腕を組んで仁王立ちする朝倉。
あの、ノエルなにかしましたっけ、と、不安な顔をする弟子に、にっこりと朝倉は明らかにいつにない笑顔を向けたのだった。
しただろう、と、そう言いたげに。
「ノエルよ。最近、お前さん、やたらと羽振りがいいそうだな」
「そりゃまぁ。なんてったって、師匠のお手伝い、頑張ってますから」
「そうかそうか。働いた金で自分の好きなものを買う、それは人間の営みにおいて最も重要なことだからな。それに気がついたってことは、お前もようやく大人になったか」
「まぁ、師匠より胸はもう立派におと――むぐぐぐ」
調子に乗った弟子の顔をつかんで、朝倉の張り付いたような笑顔がその鼻先に迫る。
「しかしなお前、無駄遣いはさすがに感心せんぞ」
その手には、カミュから渡された――ダブったシールが握られていた。
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