第586話

「という訳で、なんだかノエルの奴の様子がおかしいんだが。ポン子ちゃん、なんか知らんかい?」


「ポン? なんか知らないかって言われても、いろいろと思い当たることが多すぎて、困るポン」


 翌日。

 何かあってからでは遅いと、朝倉はさっそく行動に移った。

 

 なんといっても、くしゃみをすれば家を吹き飛ばし、走れば地響きに村が揺れ、飛べばソニックムーブで飛ぶ鳥が気絶するノエルである。

 何かある前に、トラブルの芽は潰しておく、それは朝倉がこれまで弟子を監督してきて身に着けた、一種の知恵であった。


 ということもあり、プライベートのことで一番ノエルの事情に詳しいだろう、友人のポン子に話を聞きに来たわけだが。

 なるほど、心当たりが多すぎるという回答はごもっともである。


「最近、あいつ妙に羽振りがいいぽん。いっつも、会うたびにお菓子くれるポン」


「あのがめついノエルが?」


 それは、師匠である朝倉にとってしても、すこし考えにくい状況であった。

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