第580話 弟子ともっさもっさ
もっさもっさとふっさふっさの生命体について、ノエルの造詣は深い。
「ナンキョクフサフサオオシロクマですね。ノエル、一度、機会があったら会いに行ってみたいと思っていたんですよ。普通のクマと違って、独自に進化したぶよぶよのぷにぷにな体が、なんとも魅力的です」
「そうそう、もともとはオットセイとかの仲間なんだってな」
「ちがいます師匠!! その骨格から、元はジュゴンと言われていて、陸生に進化したのはここ数千年くらいのできごとだと言われているんです。色素が薄いのは、その時の名残と言われていて――」
「あぁ、わかった、わかったから。もふもふ談義、分かったから」
ふんす、と、鼻を鳴らして師匠相手に自慢げに胸を張るノエル。
流石の朝倉も、彼女にもふもふの知識についてだけは後れを取ってしまう。
好きこそものの上手なれというが、まさしくそれの典型例であった。
「このまま、魔法使いじゃなくて、生物の研究家にでもなった方がよかったんじゃないだろうか」
「なに言ってるんですか師匠!! ノエルがそんなのになっちゃったら、師匠の大陸最強の名前を、いったい誰が継ぐっていうんです――」
「お前――」
うれしいこと言ってくれるじゃないか、この、と、もしゃもしゃとその頭を撫でる朝倉。いつもはどこか険しさのある朝倉だが、この時ばかりはそれすらもすっかりととれた、心からの笑顔であった。
「のわぁ、やめてください、師匠!! 痛いです、もじゃいです!!」
「はっはっは、この愛いやつめ、愛いやつめ」
「このままじゃノエルがもじゃもじゃもふもふになっちゃいますよぉ――」
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