第579話 師匠と書類仕事

 おきらく、ごくらく、なんでも屋な宮廷魔術師だけれども、時たまややっこしい話に巻き込まれることがある。

 その筆頭格が書類仕事である。


 魔法協会の重要な課題案件に対するサインか。

 あるいは、国を揺るがす魔法事件についての始末書か。


 と、煽ってみたがそのどちらでもない。


「ちくしょう。魔法で、一気に書類を書くのが得意だからって、こんなしょうもない仕事を押し付けやがって」


「魔法で大量に文章書かされるの、大変ですね、師匠」


「今日明日で急に必要になったから、版を掘ってる時間がなかっただ。知るかボケ。ったく、もう少し、宮廷魔術師を有効に使えよな」


 人間コピー機扱いである。

 これは朝倉の言い分に一理ある。彼女が怒ってもしかたのない依頼であった。

 しかし、相手は王族雇い主。


「ほんと、宮廷魔術師なんて、なるんじゃなかった」


「ノエル、師匠のようなお仕事だけは、しないように気をつけます」

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