第578話 適性検査の弟子

 魔法使いにはなろうと思ってなれるものではない。

 もちろん、弟子入りすることも大切だが、本人の素養に大きく左右される部分がある。要は、才能を持ち合わせていないと、どれだけ努力しても無駄という奴だ。


 そのため、朝倉たちの王国では、年に一度、十歳になった子供を対象にして、魔法の素養チェックというのを行っている。


「はい、じゃぁ、これ持って」


 検査官の一人が、少年に石を手渡す。

 やる気満々という感じの彼は、それを手にするや、むむむむと頬に空気を吸い入れて、唸り始めた。

 すると――ぽぅと小さく石が青色に発光した。


「はい合格。一応、適正量は持ってるみたいだね。魔法使いを職業にしても、なんとかやっていけるとは思うよ」


「よかった」


「ただ、ぎりぎり通貨くらいだから、しっかり勉強しなよ」


 魔力に反応して蛍光する石である。これを持ってもらい、当人の魔力量を測るという単純なものである。

 だいたいこの石が目に見えて光るか光らないかで、魔法使いとしてやっていけるかがわかる。朝倉も南条も、彼女たちの師である、パラケルススも通ってきた通過儀礼であった。


「まぁ、ノエルが持てば、うぉっ、まぶしで、バルス間違いなしですがね」


「わかってるから、絶対持たせないようにしてるんだがな」


 なお、ノエルについては特免で、この適性検査を受けていない。

 もともと彼女が朝倉の弟子になったのが遅いこともある。と、同時に、その魔力量については、石で測る必要もないくらいに膨大なことが分かっているからだ。


 カミュについてもそうだが、そういう特例が、幾つかはこの世界にも存在する。


「けど、いいんですかね、ノエル、本当に受けなくて」


「石を破裂させて怪我人出るよりはマシだ。それに、この検査は、優秀な内弟子のスカウトの場でもある。お前はほかのところの弟子になりたいのか」


「もっと優しくて、ナイスバディで、ノエルを甘やかしてくれるところの弟子になっちゃおうか――うそうそ、師匠サイコー!!」

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