第566話

 魔術においても、体術においても、まだまだ未熟なノエルである。

 当然。朝倉にその手のやり取りで後れをとる訳もない。


 結局彼女は無様に朝倉に捕縛され、強制連行的に図書館の奥へと引きずり込まれた。


「うぅっ、最悪ですぅ。どうしてノエルがこんなこと」


「文句を言わない。生きてくためには、こういう大変な仕事もしていかなくちゃいけないんだよ」


「けどやっぱり、宮廷魔術師は師匠だけなのだから、ノエルを巻き込まなくてもいいのでは」


「これも修行だ」


「なんでもかんでも修行修行!! なんて便利な言葉!!」


 そういわれると、ちょっと胸が痛む朝倉である。しかし、こればっかりは譲るわけにはいかない。なんといっても、この数、この規模の図書館である、とても一人では回りきれる訳がない。

 猫の手でも借りたいのだ、そりゃ、弟子も引っ張りだしてくるだろう。


「うまくいったら、ご褒美に、なんか中村屋のアイスクリーム買ってやるから」


「――そうやって!! 食べ物で釣れると思ったらおぼぼばぼぼべべ!!」


「よだれよだれ」

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