第564話

 文字の発達と製本技術の発達には時間差タイムラグが存在する。

 比較的早い段階で、意思疎通のために完成した文字に反して、それを筆記するのに最も適した媒体――本と呼べるものが登場したのはつい最近のことである。

 パピルス、竹簡、石板、そして石碑、様々なものに文字は筆記された。


 そしてこの大図書館は、そんな筆記媒体がより原始的な時代に作られた。

 石板でもなく、石碑でもない――。


「ここの図書館はな、各部屋それぞれに関連する知識についての知識が記載されている」


「部屋に? 記載?」


「壁画って見たことがあるだろう。あれと同じ要領だ。要は、壁に文字を刻んでいったわけだよ、この図書館は」


 だからこそ、移動することもできないし、建物を壊すこともできない。今でもこうして残されているという訳である。


「――なんだか、どこぞの小説と似たような設定ですね」


「――なんだよ、どこぞの小説って」


「一か月くらい休載してから、改稿するとか言ってた」


 あー、あー、聞こえない、聞こえない。なんにも聞こえない。

 というか、ノエルちゃん。番外編でもないのに第三の壁をそう簡単に越えないでくださいな。

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