第560話

 なんですの、それ、褒めたつもりですの、と、詰め寄る南条。

 ふと、そんな彼女の背後で、どん、と、はじけるような音がした。


 音より先に閃光が夜空を彩っていた。

 星よりも煌くその光に、はぁ、と、弟子たちが嬉しそうに顔をほころばせる。

 そんな彼女たちの表情に、少し遅れて師匠たちの顔色も明るくなる。


 緑、赤、青、紫。


 色とりどりの花火が夜空を彩り、いつもとは違う賑やかな夜空を作り上げていく。


「いいですねぇ、風流って奴ですね」


「お前にそんなものがわかるとは、俺も知らなかったよ驚きだ」


「ひどいです師匠!!」


 ふははと弟子の発言を笑う声が、花火の音の中にかき消えていく。


 お好み焼きを切り分けて、焼きそばと半分ずつになるよう容器に取り分けながら、朝倉は、こんな平和な時間がこれからも続けばよいものだな、なんて、柄にもないことを思うのであった。


「――うぅん、なんというか、もうちょっと、ボリュームが欲しい所ですね」


「――ボリューム?」


「師匠!! ちょっとノエル、花火を手伝いに」


「おとなしく、リンゴ飴でも食ってなさい。せっかく風流知ってるんだから」

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