第559話

 城の屋根に登るのは、普通の兵士ならばちょっとした至難の業である。

 そういう登攀能力を鍛えた特殊兵、あるいは、攻城兵器の力というのを必要とする。


 しかしながら、魔法使いならそうはならない、関係ない。

 すいと転移魔法で城の頂上へと移動した朝倉たちは、まだ静かな空を見上げて、ふぅとため息を吐いた。


「いいんですの。勝手に城の屋根で花火を見るだなんて」


「いいのいいの。誰もこんな所まで登ってくるやつなんていないんだから」


「おぉ、絶景ですね!!」


「――いい眺め」


 物見櫓代わりになっている最上階。

 そのさらに上の屋根に腰掛けて、魔法使い四人が夜空を見上げる。手には朝倉チョイス、祭りと言ったらかかせない、焼きそばとお好み焼き。


 流石にここまで高い所まで登れば、吹いている風もどことなく涼しい。

 そよりと頬を撫でる風に、心地よさそうに南条が目を閉じて口角を吊り上げた。姿はすっかりと、これまた朝倉チョイスの藍染の浴衣に変わっていた。


「――師匠、よく、お似合いです」


「そうかしら。私はもっとこう、ひらひらしたのとか着たいのだけれど。ほら、あの、花魁とか言うの」


「お前はモノが上等なんだから、着るものは普通くらいでちょうどいいんだよ」

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