第556話

「なんじゃ、お主ら。こんな時まで雁首揃えて」


「「師匠!!」」


 浴衣姿に着替えた彼女たちの師匠、パラケルススが朝倉と南条の前で足を止めた。

 手をつないでいるのは、いつぞやノエルが世話をした、彼の孫である。


「お爺さま、はやくはやく。わたあめ買いに行きましょう」


「待て待てエドワールや。お爺ちゃんにも人付き合いというものがあるんじゃ」


「えーっ!! あ、ノエルだ――おぉい、ノエル!!」


 今度は弟子ではなく、孫に逃げられる。

 師が師なら、弟子も弟子ということか。


 駆け去っていく少年の後ろ姿に指をくわえる老魔法使い。そんな彼の姿に、明確な衰えを感じながら、愛弟子二人はくすりくすりと顔を合わせて笑った。


「なんじゃ、お主ら、二人そろって。師匠に向かって失礼じゃぞ」


「いや、あまりに可哀想だったから」


「つい」

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