第555話

「で、その肝心の大切な弟子は?」


「祭りにつくやどこへやらですわ。一応、探知用の護符を持たせているので、迷子になることはないけれど。ハァ――」


 そんな残念そうな顔をするくらいなら、最初から素直に一緒に周ればよい。

 姉弟子の不器用ぶりを笑いながら、ふと自分の弟子はどうしたかと視線を上げる。


「――すごい、りんごが氷漬けに」


「違いますよカミュちゃん。これは氷漬けじゃなくって、砂糖でコーティングしてあるんですよ」


「このぬらぬらのてかてかが、砂糖?」


「はい、赤シロップで三倍赤い。まさしく、夏祭りの赤い彗星」


 ちゃっかりと、姉弟子の弟子と合流して、リンゴ飴の屋台を眺めている。

 こいつはこいつで自由だなぁ、と、朝倉は少しばかり不満げに眉をしかめた。


「三倍、甘さが?」


「いいえ、速さですね!!」

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