第553話

「なにやってんだ南条」


「誰のことですの。私は流れの、手乗りゴーレム売り」


 ひょいと麦わら帽子とサングラスを取り上げる。

 ちょっと、と、声を荒げて上を向いたその顔は、まさしく朝倉のよく知る姉弟子の顔に間違いなかった。


 情けないとか、ばかばかしいとか、呆れたとか、そういうものではない。

 どうしてこんな所に、彼女がいるのかという、疑問のほうが先に朝倉の頭を過る。


 ほほほほ、と、少し控えめな高笑いと共に、彼女はやけくその顔を作ってその場に立ち上がった。


「今日は縁日、楽しいお祭りの日ですわ。だから、私も用意しましたのよ」


「用意しましたのよって。お前、こんなもん売ってどうするんだよ」


「大丈夫。魔力が切れて、二日で動かなくなりますから」


「カラーひよこみたいな商売しやがって」


 師匠に言いつけるぞ、と、すごむ朝倉。

 私利私欲による魔法の行使はご法度――ということはないが、さすがにこの商売は怪しすぎる。さすがに看過できないとまなじりを釣り上げた妹弟子に、南条はとっさにすがりついた。

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