第496話

 うねり、うねりと、うごめいて、こちらへと近づいてくる。それ。


 人間の生体魔力以外には反応しないため、その姿は闇に呑まれてわからない。

 仕方ない、と、朝倉が原始魔法で魔力を散布すると、前方――数十メート先までの魔法ランプに灯りが宿る。


 青色の光に照らしだされたのは、鉱物系の不純物を多く含んでいるブラックスライムである。金属を溶かしこんで体内に取り込むそれは、言うまでもなく触るな危険の超取り扱い厳重注意モンスターだ。


 しかし、どうしてこんなものがこんな所に、と、朝倉が首を傾げた。

 そのモンスターは確かに、こんな城の水路に出るようなものではなかった。

 そもそもここには溶かすような金属もなければ、金属を溶かせるような溶液――ブラックスライムの下となる原液だって存在しないのだから。


「坑道にだって滅多に沸かない、超迷惑なモンスターだぞ」


「うおぉっ!! レアモンスター、ちょっと、ノエル燃えてきました!!」


「燃えるのはいいが燃やすなよ。うっかり攻撃すると、有毒ガスが発生する」


「――え、じゃぁ、あれ、どうやって捕獲するんですか?」


 そんなやり取りを続ける中も、うねりうねりとスライムは、師弟二人に迫ってきた。

 まさしく、大ピンチ、という奴である。

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