第495話
城内の細い通路には、定期的に魔法ランプが設置してある。人間の生体魔力を吸い取って青白く蛍光するという都合のよいそれは、ちょうど朝倉たちの進む数歩先を照らしてくれる。
「ちょうど、今いるあたりが、ノエルたちの工房の上あたりでしょうか」
「だな」
「ガコって音がしたから。もしかして工房の上にスライムいたりして」
「お前、そういう縁起でもないこと言うんじゃないよ」
その音は冷房システムの停止音のはずである。
スライムが降って出て来たならばまだしも、上に部屋のある朝倉の工房裏で、それが起こるとは考えにくい。
というか、そもそも、この冷房システムは、天井と床の間のわずかな隙間に過冷却水を流しているもので、何かが落下するようなスペースなどそもそもないのだ。
そう、本来ならば、そんなことはない、そのはずなのだが――。
もそり、もそり、と、前方に何かうごめくものが見える。
「ノエル、お前、あながち間違いじゃないかもしれないぞ」
「えっ、えっ、本当ですか? ノエル、大正解ですか? 賞品はなんですか?」
スライム一年分かなぁ。そんなとぼけたことを言いながら、朝倉は自分の杖を取り出すと、闇の中をうごめくそれに、その先を向けた。
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