第492話

「たたた、大変です、朝倉さま!!」


 工房に急ぎ駆け込んできたのは、くだんの城の冷房システムを管理している魔術師だ。流石に魔術師の端くれらしく、黒いフードをかぶって入るが、魔力供給だけを目的に雇われているだけあって、今一つ着ている服装があか抜けない。

 魔法使いというよりは、一介の技師という感じである。


 ついでにいうと、その反応もあまりあか抜けたものではない。

 わっちゃわっちゃと大げさな身振り手振りで、大変だ大変だと叫ぶばかりで、まったく話が伝わってこない。

 どうどう落ち着け、と、朝倉が彼の肩を叩くと、ようやく彼は手を下げた。


 まぁ、そんな魔法使いが、飛び込んで来たのだ、理由を察せなければ宮廷魔術師も、大陸最強の魔法使いの名も廃るというもの。


「し、城の冷房システムが故障を!! どうやら、冷却材にスライムが沸いたみたいです!!」


「――まじかよ」


 朝倉は頭を抱えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る