第483話

 そして一か月の月日が経った。


「朝倉さん、工房を尋ねたら何やら出かけていると聞いて――」


 修業地を不意に訪れたのは朝倉の姉弟子である南条であった。

 回を追うごとに便利キャラとしていろいろと重宝されていく彼女。今回も、修業の旅に出たと聞いたきり、とんと音沙汰を聞かなくなった妹弟子を案じてのこの行動である。


 かすかな、朝倉の魔力をたどって辺りを見渡す南条。

 と、その時、彼女の背後に巨大な影が差し込んだ。


「な、なんですの!? 熊、それとも、オーク!?」


 二つの足で立つ巨体がその影から分かる。急いで振り返った彼女が目にしたのは――でっぷりとまるまる太った少女の姿であった。


「んあー、カミュちゃんの師匠じゃないでぶかー。どうしたんでぶかー」


「その声!? もしかして、ノエルさん!?」


「やだなぁ、ノエルを見間違えるなんて、酷いじゃないでぶかー」


 その言葉尻の微妙な変化から察していただきたい。

 彼女は一か月前の姿はどこへやら、すっかりと、オークみたいな体型になってしまっていた。


 理由は明白。美味しいものを食べ過ぎたのである。

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