第481話

「――では、ノエルは今日は見たい魔法テレビがあるのでここで」


「待て待て、待てい、ノエルちゃん。お前、弟子のくせに何一人だけで帰ろうとしておるのだ」


 そろりと朝倉の背後から逃げようとしたノエル。

 その襟首をしっかりとホールドして、朝倉が能面のような笑顔を見せる。


 師匠が苦しんでいるというのに、弟子がそれを見捨てて逃げるなんて言語道断である――とは、流石に朝倉もやりすぎな感はある。

 しかしながら、ダイエットに道連れを求めてしまうのは、どこの世界でも仕方ない。


 道連れにされてしまった方からすると、たまったものではないけれど。


「いやです!! ノエル、全然太ってないですから!! ていうか、師匠みたいに、胸の脂肪まで燃焼するような感じの生き方はしたくないです!!」


「胸の脂肪は元からないんだよ、いいからちょっとつき合え。前からお前には、ちょっとフィジカル面の修業が足りないと思ってたんだ」


「やだやだ、やですぅ、辛いのいやですぅ――お家帰りたい!!」


「今からこの山がお家なんだよ、ほれ、観念しろ」

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