師匠とお腹

第477話

「師匠!! 師匠!!」


「だぁもう、くっつくな。お前、最近なんだかまとわり過ぎだぞ」


 例の事件段位試験への魔法生物乱入から帰ってきてというもの、ノエルから朝倉へのスキンシップは激しくなった。まぁ、なんといっても瀕死の重傷を負ってしまったのである、いつまたそんな目にと思うと、心配からそういう風な側面で首をもたげてくること自体は、朝倉もまぁ目を瞑っていた。


 しかしながら、人前でベタベタとするのは勘弁していただきたい。


 今日は朝倉が宮廷魔術師を務める王宮の、ちょっとした式典の最中である。

 その最中に、腹回りに顔を押し当ててひっついているノエルの姿は、嫌がおうにも周りの目を引いた。


 こんなことで目立ちたくはなかったな、と、朝倉。

 とはいえ、式典で多くの目がある手前、いつものように拳骨で止めるのもためらわれる。

 はぁ、と、ため息を吐こうとした時だ。


「――およ?」


「どしたノエル? ようやく自分のやってる馬鹿さ加減に気がついてくれたか?」


 弟子がいつも出さないような声を出して、じっと彼女の腹回りを見つめた。


「師匠、もしかして――太りました?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る