第475話

 ふと、そんなパラケルススの工房の扉が、ぎぃ、と、ひらかれる。


「師匠、ここですかぁ?」


 少し不安げに、工房の扉の隙間から、中を窺っているのは間違いなく――朝倉の愛弟子であるノエルであった。


 反省の意味と、南条の保護もかねて、彼女は朝倉の工房に置き去りにしてきたのだが、どうやら心細くなって、彼女を探してここまでやって来たらしい。


 流石に、そこまでされて追い返すほど、朝倉も鬼ではない。


「おう、ノエル、よくここが分かったな」


「分かりますよ、そりゃもちろん。何年師匠の弟子をやってると思ってるんですか。師匠の考える行動パターンなんて、ノエル、知り尽くしちゃってますから」


 えへん、と、何故か胸を張る不肖の弟子に、たまらず苦笑いをこぼす朝倉。


「さすがにもう、パパラッチなんかは連れてきてないだろうな」


「上手くまいてきましたよ。というか、こんな山奥、普通の人なら来れませんって」


「それはそうか」

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