第474話

「まぁ、師匠はそう言いましたけれど、私、別にそんな意中の相手などおりませんし」


「だろうなぁ。お前、結構潔癖なところあるもんな」


 そんなところありませんわよ、と、否定する南条。

 しかしながら今の今まで、彼女に浮いた話の一つでもあったかといわれれば、そんなものは皆無に等しい。

 悲しいくらいに独り身である。

 だいたい、弟子を取っているだけまだマシというほうであろう。


 もっともそれは朝倉についても言えることなのだけれど。


 二人して視線が合うなり肩を落とす。

 いい歳してそういう話もないことを、それなりに気にしているのだろう。


「魔法ばっかり研究してないで、もうちょっと、いろんなことに手を出してれば、こういう時に身を持ち崩さんで済む。朝倉・南条よ、研究も大事だが、人間というのはそれ以外の面も大切なのじゃ。あまりのめり込み過ぎてはいかんぞ」


「「いや、それ、師匠にはいわれたくねえ」ですわ」

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