第472話

 確かに、朝倉は南条と違って、ベストセラー魔導書を書いたことはない。

 しかし宮廷魔術師という特性上、王族のスキャンダルやらなにやらに巻き込まれて、あんな風に追いかけ回されるのはそうそう珍しいことでもない。


「人のうわさもなんとやら。ブームが過ぎ去るのを待つしかないですね」


「まさか、ここまで需要があるとは思いませんでしたわ」


「疑似魔法生物について、ここまでウケたのはたしかに久しぶりだよな」


「マンドラゴラの魔導書が出た時に、そこそこ話題になったよな。あんときは、俺の弟も、仕事で使うからとかいって育ててたの覚えてるよ」


 その著者も、なんだかんだとうるさく言う世間が嫌になって、いつの間にか隠棲してしまった。とかく朝倉たちは魔法使いでこそあって、有名人ではないのだ――。


「魔法以外のことで、人生を煩わさせられるのは、正直たまったもんじゃないよな」


「まさしく、それですわ――」

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