第471話

「師匠、元気を出してください」


「カミュ。ありがとうね。まさか、こんなことになるとは、私も思っていなくって」


「私もです。私のために書いてくれた魔導書が原因で、こんなことになるなんて」


 台所からお茶を持って現れたのは、問題の発端となった――と言ってしまうとかわいそうなのだが、南条の弟子であるカミュだ。

 朝倉と南条の分とおぼしきお茶を持って現れた彼女は、ふてくされて寝ているその師匠の前へと二つそれを置いた。


 おそらく、パラケルススが自分で焼いたのだろう、白磁のティーカップに、もくもくと湯気が立っている。すぐに、朝倉は南条の対面に座ると、大変だなぁとその境遇を哀れむ言葉を彼女の肩にかけた。


「もういっそ、私もどこか山奥で暮らそうかしら」


「そうした方がいいかもな。あいつら、意外としつこいから」


「出版もしとらんのに、偉そうな口を利くのう、クローデットや」


「確かにそうですけど――師匠、王宮魔術師ってのも、これはこれで大変なんすよ」

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