第464話

「師匠!! ここの、ここのベタはどう塗るんですか!! 分かりません!!」


「なんでベタの塗り方がわかんないんだよ!! お前、本当に漫画家目指してんのか!!」


「分からないことあったらすぐに聞くようにって、言ったのは師匠じゃないですか!!」


「前に教えただろうが、この×点が描いてあるところをだな」


「×点を塗りつぶせばいいんですね!! とりゃぁ!!」


「だぁっ!! なにやってんだ、盛大にはみ出てるじゃねえか!!」


 弟子アシスタントとかばってしまったからには仕方ない。

 自分の原稿のせいで、朝倉に多大な影響をかけてしまったノエルは、その罪滅ぼしもかねて、本格的に弟子にして欲しいと朝倉に頼み込んできたのだ。


 出版社の社長のご令嬢を手前に、いや、それはちょっと、と、強気に断れるほど朝倉も大先生をやっちゃいない。所詮は明日の生活もしれない風来生活の漫画家である。金づるは掴んでおくにこしたことはない。


 そんな訳で、正式に弟子として雇うことにはしたのだが。


弟子アシスタントって、こんなに育てるの大変なものなのだろうか」


「しかたありませんわ、引き受けたんですもの」


「南条、お前なぁ――他人事だと思って。担当編集者だろ」


 やはり異世界に来ても、ノエルはノエル。はたして、この師匠と弟子は、魔法を使ってもペンを取っても、万事この調子なのであった。


「師匠!! ノエルが考えた、新しいライバルキャラ――暗黒竜の呪いを身体に封じ込められた主人公の兄で性転換してお姉さまになった不死身強キャラのキャラデザなんですけど!!」


「そんなもんいらん!! いらんから、ちゃんと仕事しろ!!」


 どっとはらい。

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