第462話

「――ところで、お前、ツイッターは知ってたとしても、よく俺の住所なんて知ってたな」


 カリカリ、と、ペンを入れる手を止めて、ノエルがベッドの朝倉の方を振り返る。

 その顔にはどうやればつくのだろうか、べったりと――まるで正月の羽子板で負けに負けたというほどに――墨が張り付いてた。


 手元の原稿は見るまでもないなと、あきらめと共に朝倉はノエルに尋ねる。

 すると、当然です、と、彼女は不敵に笑った。


「パパに教えていただきましたから!!」


「パパ?」


「ノエルのパパはですね、この漫画雑誌を出してる会社の社長さんなんですよ。そこに所属する作家の個人情報なんて、蛇口からオレンジジュース出すくらいに簡単なことです。えへんぷい」


 結構、それは大変なことなんじゃないのか、と、朝倉の額に冷や汗が走る。

 いや待て、それは結構まずいことなんじゃないのか――と、彼女の顔がホラー小説のごとく、ここに来て初めて真っ青になりひきつった。


「うぉおぉっ!! ついに、憧れの師匠と一緒に原稿を造ることができるなんて、ノエル、夢のようです!!」


「あぁ、うん、夢だといいね――」


「この二人の汗と涙と血と涙の結晶が、今月号に載るんですね!! 胸アツです!!」


「涙二回出てるね、なんでだろう、ごめん、ちょっと涙が出て来た――」

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