第35話

 世界最硬。


 どんな刃物も鈍器もダメージを通さない、魔術鉱製のドラゴンもどきの外骨格。


 しかし、一点集中で強力な力――それも破壊神を吹き飛ばすほどのもの――が加われば、流石にひびのひとつも入る。


「ぐぉおぉおぉおおおッ!!」


 衝撃により後ろに吹き飛んだドラゴンもどき。


 黒光りするその硬質な身体の一部が、もろりとその場に崩れ落ちた。


 中に見えるのは、緑色をした生身。


「さぁ、もう一撃――おろっ?」


 必殺技による反動か、ノエルはその場にもつれて足をついた。


 魔力量と魔法の才能は確かなものだが、それが彼女の身体に見合うものかどうかは別の話。

 使い慣れない必殺技に、ノエルは思いがけぬ反動を受けたのだ。


 すかさず反撃を仕掛けるドラゴンもどき。


 眉間を砕かれた怒りに狂うそれは、その巨体をもたげて彼女に踊りかかった。


 しかし――。


「よくやったわノエル。貴方にしては、上出来よ」


 それは彼女の保護者――大陸最強の師匠が許さなかった。

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