第30話

「師匠ぉ。相手の出方を待つなんて師匠らしくないですよぉ。早く終わらしてお城に帰りましょうよぉ」


「案山子が喋らない」


 はい、と、いい声で返事をするノエル。


 マヌケな弟子は、箒に胴をぐるぐる巻きにされ、畑の真ん中に干されている。

 とんだ即席案山子である。


 でも師匠ぉ、と、食い下がる弟子に、再びクローデットは沈黙魔法サイレントをかけた。


 土竜は周日行性。


 夜、昼となく、行動する生き物である。


 巨大になっても、その性質は変わらない。


「最後の活動は今朝。そろそろお昼時、規則正しい土竜なら出てくる頃かしら」


 グゴゴゴ。


 大地に鈍い音が響く。


 来たか、と、クローデットは杖を構えた。


 どこに出る。


 眼を凝らし、耳を澄まし、音の出所を探す。


 そうして、彼女の視線がたどり着いたのは――。


「ぐーっごごごご!! ごっ、ごふっ!! えふっ、っふ!! ――ぐぅ」


 鼻ちょうちんを出して、いびきと共に眠る、不肖の弟子であった。


 サイレントでも吐息までは止められない。

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