第26話

 ノエルがクローデットに預けられたのは、彼女が大陸最強の魔法使いだからという理由ではない。


 どんなに魔力が強い人間も、それがなければ所詮人間。


 魔法使い達は、己の魔力で御せない相手に、腕力で封じる方法を採用したのだ。


 それがたまたま、この大陸最強の魔法使い、クローデットだった、というだけ。


「ギブギブギブ!! すみません、師匠、私が浅はかでした!! どうか、どうかご容赦を!!」


「パブロフの犬って知っている? 覚えの悪い駄犬も、おしおきをしてあげれば、何をやっちゃいけないか分かるようになるのよね―」


「そんな!! 人間の身体はそんな方――」


 響くノエルの断末魔。


 顔を青くするアズライトに向かって、にっこりと微笑むクローデット。


「どうかしら。魔法勝負じゃなく、間接技の勝負であれば、幾らでも付き合ってあげるけれど」


「いえ、遠慮しておきます」


 かくして研究室の平穏は、弟子の尊い犠牲により守られたのだった。

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